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横浜マリーナクリスマスパーティ

横浜マリーナクリスマスパーティ

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第126回

斎藤智

今年の横浜マリーナのクリスマスパーティは大人数で賑やかだった。

はじめ、クリスマスパーティは、いつものラッコのメンバーだけで、ヨットのキャビンの中で静かに過ごすつもりでいた。

それが、ほかの艇のメンバーたちも参加したいということで、参加する人数がどんどん増えていき、最終的に、横浜マリーナに停めているヨット10艇ぐらいのメンバーが参加することになっていた。

10艇分のメンバーが参加することになってしまうと、どれかのヨットのキャビンの中だけでは、全員が入れなくなってしまう。

横浜マリーナの艇庫のうち、一番海側にあるアリアドネの艇庫の軒下とその向こうの広場で開催することになった。

「バーベキューセットを借りてきましょう」

隆たち男性参加者たちは、横浜マリーナのスタッフに頼んで、クラブハウス倉庫に締まってあるバーベキューのセットを借りてきた。

麻美たちは、最初クリスマスパーティは、暖かいお鍋でもやるつもりでいたが、お鍋だと大人数分を作るのが大変なので、バーベキューと豚汁でやることになったのだった。

暁の若い男性クルーたちが、バーベキューセットに木炭をセットすると、火を起こし始めた。

その間に、麻美たち女性陣は、ショッピングスクエアのスーパーまで行くと、そこでお肉や野菜など食材を買いに出かけた。

隆と何人かの男性陣も一緒について行った。

「荷物持ちでついて来て」

麻美に言われたのだった。

これだけの大人数だと、揃える食材もかなりの量になる。

ルリ子は、食材以外に、スーパーの雑貨売り場でしっかり花火を買うのも忘れなかった。

「花火も買ってきたよ」

ルリ子が買ってきた花火を、暁の男性クルーたちに見せた。

「打ち上げ花火がないじゃない。ロケット花火みたいなやつ」

ルリ子が買ってきた花火は、線香花火のような小振りのものばかりだった。

「どの花火にしたらいいのかわからなかったのよ」

「いいですよ。俺たちで買いに行ってきます」

男性クルーたちは、麻美と一緒にもう一回スーパーに花火を買いに出かけた。

麻美たちが、花火を買って戻って来ると、パーティは、もう既に始まっていた。

「麻美。この肉汁美味しいよ」

隆が、カップに装った肉汁を麻美に手渡した。

「アリアドネ特製の肉汁だってさ」

隆が言った。

「こっちの焼きそばは、風神の特製焼きそばだって」

「それぞれの料理が、各艇の独自の味付けで作られているんだよ」

洋子が説明した。

「本当。どの料理も、それぞれの艇で味が違うのね」

麻美は、料理を食べながら答えた。

日が暮れて暗くなってきた。

いつもは、点いていないアリアドネの艇庫前の灯りが点いた。

横浜マリーナのスタッフが、仕事が終わって帰る前に、クリスマスパーティをしている人たちのために、灯りを点けてくれたのだった。

花火大会

麻美たちは、アリアドネの艇庫軒下にベンチを持ってきて、そこに座っておしゃべりしていた。

その少し向こうのところでバーベキューが焼かれていたので、その熱のおかげで艇庫軒下の辺りは、暖かったのだ。

「今日の夜、船に寝たら寒いかな?」

「寒いかもね。でも、艇庫に陸電があるから、電気毛布が使えるよ」

ルリ子たちは、夜ヨットの中で寝るときのことを考えていた。

「花火を始めようか!」

「それじゃ、バケツに海の水をすくっておけ!何かあった時は、すぐに消せるように」

食事を食べ終わった男性陣が、広場で叫んでいる。

「花火が始まるみたいよ」

「うん」

麻美が言うと、佳代たち女性陣が答えた。

「ルリちゃん、花火やるって言っているよ」

ルリ子は、麻美に言われて、花火をやろうとしている男性陣のところに行こうかと思ったが、ほかの女性陣は、皆、軒下のベンチで座ったまま、花火見物するつもりみたいなので、自分も座って見物することにした。

「行くぞ!」

空きビンに花火を立てて、広場に置いた男性が叫ぶと、火を付けてから花火から離れた。

ヒューン!

花火が空に向かって上がって行くと、上空で破裂した。

「きれい!」

「あんなにすごい花火売っているんだね」

小さな花火ばかり買ってきたルリ子は、男性陣が上げている大きなロケット花火を眺めながら言った。

女性たちは、男性陣が次々と上げていく大きな花火を眺めていた。

「浴衣着たくなってきた」

「そんな夏じゃないんだから。今夜はクリスマスの花火なのよ。気持ちはわかるけどね」

麻美は、ルリ子の言葉に笑った。

麻美たちが、花火を眺めていると、その花火に艇庫の後ろのほうから大きな歓声が上がっていた。

「え、誰?」

麻美たちは、軒下から顔を出して歓声のしたほうを見た。

横浜マリーナのショッピングスクエアの屋上テラスのところに、いつの間にか人がたくさん集まっていて、その人たちは、麻美たちのやっている花火を眺めていた。

「うわ、いつの間にかいっぱい見学者が増えている」

麻美たちは、驚いていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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