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お帰りなさい

お帰りなさい

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第12回

斎藤智

麻美は、アメリカ留学を終えて、帰国した。

専門学校での勉強を終えて、戻って来たのだ。もう大人なのだからと、両親は空港まで出迎えに来てくれなかったので、代わりに隆が迎えに行った。

大きな荷物を麻美から受け取り、自分の車のトランクに積む。

帰国した麻美に隆は今、どうしているのかと聞かれて、自分の会社を起業して、そこで働いていると、自分が発案、制作したサイトが成功したことから順番に麻美に伝えた。

麻美も手紙、メールでは、聞いていたが、本当に隆が会社を起こして成功するとはと驚いていた。

今度は、逆に隆が麻美にこれからどうするのかを聞いてみた。

麻美は、具体的にはまだどこで働くか決めていなかった。このまま決まらないと、父に家の貿易会社で働かせられるとかで、それだけは避けたいとかで、どこか就職先を探すのだそうだ。

「俺の会社で働かないか?」

隆は、唐突に麻美を自分の会社に誘った。

麻美は、最初はそんなに気を使わなくてもいいよと遠慮していたが、忙しくて本当に人手が足りないことを知ると、隆の会社で働くことに決めた。

勤務初日、麻美は会社に行くと、どうせ事務の仕事かなにかだと思って普通にOLらしくブラウスにスカートの服装で出社した。

会社で今日から勤務なのだがどこですか?

と自分の名前を伝えて受付の女性に聞いたのだが、どの社員もどこの配属だかよくわからないようだった。麻美は、途方にくれて適当な椅子を見つけて1時間ぐらいそこに座っているしかなかった。

1時間ぐらいすると、どこからともなく隆が迎えに来た。

麻美は隆について行くと、そこは隆の社長室だった。麻美の配属は秘書室で、仕事の内容は隆の社長秘書に決まった。

「どうして私なの?私は秘書なんて一度もしたことないよ」

「麻美ならば、学生のころから俺のことをずっと知っていて、仕事のサポートや助言を誰よりも的確にしてもらえると思ったからさ」

確かに、麻美はいつも遠慮なく、思ったことをなんでも隆には言っていた。でも、本当に私に隆の秘書なんて出来るのだろうか。

結局、案の定、麻美は隆の秘書というよりも管理しているような、お目付け役のような秘書になってしまっていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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