Skip to content

館山の町

1本を読もう

2本を読もう

3本を読もう

4本を読もう

5本を読もう

6本を読もう

7本を読もう

8本を読もう

9本を読もう

10本を読もう

11本を読もう

12本を読もう

13本を読もう

14本を読もう

15本を読もう

16本を読もう

17本を読もう

18本を読もう

19本を読もう

20本を読もう

21本を読もう

22本を読もう

23本を読もう

24本を読もう

25本を読もう

26本を読もう

27本を読もう

28本を読もう

29本を読もう

30本を読もう

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第87回

斎藤智

隆たちは、少し館山の町を歩いてみることになった。

ラッコの側面に付いているドアの鍵を締めると、麻美は小さなバッグを持って港を出た。

「あの山の上に、見えるお城が館山城だよ」

「本当だ。お城って、私、一回も入ったことない」

ルリ子が言った。

「時間があれば、あそこまで行ってみたいけど、けっこう距離があるからな」

館山城は、港からちょっと離れているので、行くのをあきらめて、駅前に行ってみることになった。

駅までの道は、けっこう広めの舗装された道路が海岸沿いに続いている。

「お店とかビルは、あんまり無いけど、館山の町は、けっこう栄えているのね」

「うん。まあね、って麻美は、どこと比べて栄えているって言っているの?」

「え、前に行った保田とか勝山の港町よりは、同じ千葉で都会かなって思ったの」

館山の町、港のすぐ側には、わりかし大きなスーパーマーケットもあった。

今回の旅は、そんなに長くないし、今朝、横浜マリーナから来たばかりなので、まだ食料も船にいっぱい積んであって、買い出しの必要はないが、長めのクルージングのときには、買い出しが便利な港かもしれない。

駅前に到着した。

駅も、勝山の駅よりは、はるかに大きな駅舎だった。

隆たちは、ぶらぶらと横に長く並びながら、駅舎の中に入って、案内表を眺めた。

「東京からだと、ずいぶんたくさんの駅に停まるんだね。私たちかなり、遠くまで来たんだ」

「本当だ。館山って鴨川とかの近くなのかな?そしたらヨットで、ここから鴨川とかも近いの?」

佳代が麻美に聞いた。

麻美も、よくわからないので、隆のほうを見た。

「鴨川か。ヨットでも、ここから行けないことはないよ。行けないことはないけど、湾を出たら、灯台を周って外房のほうに出ないと行けないから、帰りが大変だよ」

隆は答えた。

「それに外房は、外海、太平洋に面しているから、天候によっては、けっこう波とか風もあるよ」

「そうなんだ。それじゃ、ヨットは、ここに停めて、電車で行く方がいいかもね」

皆は、駅舎を出た。

「さあ、向かいのところにあるお風呂屋さんに行ってから、船に戻ろう」

隆が言って、皆は駅前の風呂屋に入って行った。

勝山

ラッコは、朝早くに館山港を出港した。

昨夜は、隆が言うところのトラブルメーカー、マリオネットもいないし、館山の夜は静かなものだった。

いつもマリオネットのメンバーたちと夜遅くまでお酒を飲んで、起きている麻美と雪も、早く寝る洋子たちと同じ時間に早々に眠ってしまっていた。

本日の目的地は、千葉の内房、勝山の港だ。

館山から勝山までは、同じ千葉の房総半島ということもあり、だいたい3、4時間ぐらいで行ける。

9時に出航したとしても、お昼過ぎには到着してしまう計算だ。

にも関わらず、ラッコは朝の6時過ぎには、もう館山港を出港していた。

「暁って早いの?一番でやって来るかな」

ルリ子は、隆に聞いた。

「たぶん。うちのマリーナだけでなく、けっこう相模湾のヨットレースでも上位を走っているヨットだから、一番にやって来るとは思うんだけどね」

隆は、ルリ子に答えた。

その日の朝、暁たちが参加しているヨットレースは、8時に木更津をスタートしているはずだった。

「朝8時に木更津スタートっていうことは、暁さんって前の日から木更津に泊まっていたの?」

麻美は、隆に聞いた。

「そうだよ。いや、木更津のホテルに泊まっていたってわけではなくて、昨日の夜、深夜に横浜マリーナを出航して、朝早くに木更津到着しているはずだよ」

「夜じゅう走っているの?それじゃ、ぜんぜん寝ていないんじゃないの」

「うん、寝ていないよ。まあ、仮眠ぐらいはしているかもしれないけど…」

「それで、そのままレースに出場しちゃうの?すごい!私には、とても無理。大学の受験とかだって、前の日には、いつもよりも早く寝て、しっかり睡眠とらなければ実力出せないのに」

麻美が言うと、

「それで、前の日にぐっすり寝たおかげで、麻美は希望通りの大学に合格できたんだ」

「うん、まあね。2個は落ちたけど・・」

麻美は、隆に答えた。

「って、うるさいな。隆は余計なこと言わないでいいの」

麻美は、隆の頭をコツンと小突いた。

「前の日の廻航から、クルーにとってのヨットレースは、始まっているんだろうな。廻航も含めてがレースなんだよ、きっと」

ラッコは、館山湾を出て、昨日走った航路を、昨日とは逆に北上していく。

しばらく行くと、勝山の前にある浮島が見えてきた。

「戻って来たな」

隆は言った。

浮島にやって来たラッコは、その沖でアンカーを落として、暁たちレース艇がやって来るのを待つことになった。

マリオネットとの再会

暁がやって来た。

暁が、こちらに向かってやって来た。

麻美は、双眼鏡を片手に、木更津方面を覗きながら暁が来るのを待っていた。真っ赤なスピン、スピンネーカーを上げて、ヨット集団の中、一番先頭でこちらに走って来るヨットがあった。

「暁さん、来たよ!」

麻美は、その派手な赤いスピンネーカーを見つけると、隆に報告した。

「暁って、あんな真っ赤なスピン持っていたっけ?」

隆は、暁のスピンは青かった気がしていたので、首を傾げた。

「新しく新調したのよ。私、この間、佳代ちゃんと一緒に、あの新しいスピンを見せてもらったもの。ね、佳代ちゃん」

「うん。私たちに見せながら、望月さんがものすごく自慢していたよね」

佳代は、麻美に答えた。

「確かに!すごく自慢していたよね。あのスピンは50万以上掛かったんだとかって」

麻美も頷いた。

「スピンに50万か。うちだったら、スピンに50万なんて考えられないよな。50万あったらテント付けるとか、性能の良いオートパイロット付けるとかしたするな」

隆が言うと、横にいた洋子も、確かにって感じで頷いていた。

赤いスピンのヨットが、近づいてきて、だんだんその船体まで肉眼でもはっきり見えるようになってきた。

麻美の言うとおり、赤いスピンのヨットは、暁だった。

暁は、後ろに何艇ものヨットを従えていた。

「さすがね。暁さん、一番じゃない」

「ほかのヨットを、後ろに従えてかっこ良いわね」

麻美たちが、話していると、暁がすぐ側まで寄って来た。

ラッコのステアリング、舵を握っていた洋子は、レースのじゃまにならないように、レースの針路から船を外にずらした。

「暁さーん」

麻美は、やって来た暁の乗組員に手を振った。

暁に乗っていた乗員や望月さんも、麻美が手を振っていることには、気づいていたようだったが、レースに真剣で麻美に手を振り返しているどころではなかった。

暁の船の後部の席に、でんとオーナーづらして腰掛けている望月さんだけが、麻美の方に向かって大きく手を振り返していた。

「レースで抜かれないようにするのに必死で、麻美にまで手を振り返していられないってさ」

隆は、微笑みながら麻美に言った。

暁は、すぐ後ろに迫っていた後続艇とデッドヒートを繰り返しながらも、一番に浮島を周って、木更津に戻って行った。

スタートした木更津にゴールラインがあるのだ。

「さあ、俺らは、勝山港に入港しようか」

レースの参加艇のほとんどが浮島を周って、木更津に戻っていってしまうと隆は、ラッコを勝山港に入港させた。

港内には、マリオネットの姿があった。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

Comments

Comments are closed.

こちらのページもよくご覧になられています

 

Widgets

Scroll to top