たかし

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第220回

斎藤智

お昼の時報が鳴った。

「それでは、お昼にしましょう」

クラブハウスでやっていた授業が終わった。

教壇で、ヨットの乗り方や注意事項を説明していた先生たちは、授業を終えた。

これから、お昼のお弁当の時間だ。

お弁当を食べ終えて、お昼休みが終わったら、午後から何グループかに別れて、ヨットに分乗して体験試乗するのだった。

「隆は、お昼どこで食べるの?」

「照美は、どこで食う。船の上で食いたいな」

朝、横浜マリーナの職員が、各ヨットに配布していたお弁当と同じものを、生徒たちは、先生からもらっていた。

「隆は、お船の上で食べたいの?」

麻美は、隆に聞いた。

「うん。お船の上に乗って食べてもいいの?」

「いいよ。お姉さんの船来て、いっしょに食べる?」

麻美は、もうすっかり子どもたちと仲良くなってしまって、照美、隆と呼び捨てで話すようになっていた。

「隆、どこで食う?」

「お姉さんが、お姉さんの船で食べてもいいってさ」

「マジで?船で食べてもいいっすか」

隆以外の男の子や女の子も、船で食べてもいいか?と麻美に聞いてきた。

「いいよ、食べに行こうか」

麻美は、子どもたちを引率して、ポンツーンに停まっているラッコの艇上に案内した。

「早く、早く!」

子どもたちが、あけみの手を引っ張って、船へと即す。

「あんまり急がないであげて。あけみお姉さんのお腹には、子どもがいるからね」

麻美が、あけみの手を引っ張っている子どもたちに言った。

「え、お腹に赤ちゃんいるの?」

「デブだから、太っているんじゃないの?」

「デブだからじゃないよ」

あけみは、子どもたちに言われて、笑いながら自分のお腹をさすってみせながら、答えていた。

「隆!そっちの船じゃないよ。こっち、こっち、右側ね」

隆が、ラッコと違うヨットに行きそうになっていたので、麻美が修正した。

ラッコのヨットの上で洋子と話していた隆は、麻美に大きな声で隆と叫ばれたので驚いて、麻美たちの来る方角を見ていた。

「あの男の子、名前が隆っていうんだね」

洋子が笑った。

「驚いた、麻美に隆!とか叫ばれるときって、なんか怒られるときだから、ドキッとしたよ」

隆が言ったら、洋子と香織がクスクスと笑っていた。

お姉さんの船

「すごい!お姉さんの船」

子どもたちが、ラッコのデッキに上がって騒いでいた。

「さあ、ここに座って食べようか」

麻美は、子どもたちをフォアデッキのチークの上に座らせて、そこでお弁当を食べようと勧めた。

子どもたちは、先生たちから配られたお弁当をそれぞれ持っていた。

「お姉さんのお弁当は?」

麻美のすぐ側にいる女の子が、聞いた。

「え、私たちのは無いから、お船の中で作らなきゃならないの」

麻美が、女の子に言うと、

「麻美さん、お弁当あるよ」

香織が、さっき横浜マリーナの職員からもらった子どもたちと同じお弁当を、麻美に見せながら言った。

「あ、あったんだ」

麻美が言うと、香織が麻美たちの分のお弁当を持って、フォアデッキに来た。

「じゃ、一緒に食べようか?」

「うん」

子どもたちは、麻美の周りのデッキに腰かけて、お弁当を広げた。

麻美と佳代、ルリ子も、香織から受け取ったお弁当を広げた。

「向こうの人たちは、もう食べ始めているんだ」

後ろのデッキから麻美たちを見ていた隆が言うと、

「私たちも食べましょう」

フォアデッキから戻ってきた香織が言った。

フォアデッキは、麻美たちや子供たちで満員なので、隆たちは後部デッキでお弁当を食べていた。

「このヨット、お姉さんのヨットなの?」

「お姉さんのヨット大きい!」

男の子が、麻美に聞いた。

「うん、そうだよ」

麻美が答えた。

「え、お姉さんのヨット!?」

麻美のすぐ横でお弁当を食べていた女の子も、麻美に聞いた。

「すごおい!お姉さんってセレブだよね」

「そうなんだよ!きっとお姉さん、チョー大金持ちなんだよ」

その周りにいた男の子たちが、話している。

「大金持ち?」

「うん、チョー、チョー大金持ちなのよ。エヘン」

麻美は、子どもたちの〝チョー大金持ち〟の表現がおもしろくて、子どもたちのノリに乗っかって返事していた。

「うわ~、すごい!」

「お姉さん、チョー大金持ちだって!」

「プリンセスだよ、プリンセス!絵里と同じじゃん!」

男の子たちが中央にいた絵里という女の子に言った。

絵里は、嬉しそうに着ている水色のワンピースの裾を広げてみせた。

「絵里もプリンセスなんだよ、プリンセス」

麻美の側にいた鼻の高い男の子が、麻美に説明した。

「そうなの、ブルーのワンピースがとっても可愛いプリンセスね」

麻美が、絵里のワンピースを見ながら答えた。

「あんたはオラフだものね」

「どーも、オラフです」

女の子に、オラフと呼ばれて、鼻の高い男の子は、自分の鼻を手でニンジンのようにしてみせながら、挨拶してみせた。

「アナ雪ね」

香織は、子どもたちの話していることを解説していた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。


たかし
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