この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第64回
斎藤智
長く楽しかった夏のクルージングも終わった。
今日の昼の食事は、そうめんだった。
この夏、ヨットで、そうめんを作るのは、初夏から数えるともう何十回目かだ。
ラッコは、毎週のように、ヨットを出している。
暑くなってきてからは、そのほとんどの昼ごはんは、そうめんを作っていた。
ほかのヨットでも、多くのヨットは、夏になると、そうめんを作っている船が多かった。
本当は、そうめんは、作るときに、茹でるのに水を大量に使うから、水が貴重なヨットには、不向きな料理のはずなのに、小さなギャレーでの料理のし易さからか、多くのヨットでは、夏になると、そうめんを作ることが多かった。
「ルリちゃん、そうめんのつゆを作ってくれる?」
「はーい」
ルリ子は、麻美に言われて、皆の分のそうめんのつゆを薄めて、作っている。
佳代は、そうめんに入れるワサビを、削っていた。
「最近、ヨットに来ると、そうめんばかり食べているよね」
「そうね。夏は暑いからね」
「なんか毎週、そうめんを作っているから、私、そうめんだけは、上手にお料理できるようになったかも」
洋子が、話している。
「よかったじゃない。これで、いつでもお嫁に行けるね」
「うん。でも、そうめんしか作れないお嫁さんだけどね」
皆が、笑った。
「お昼、できました!」
麻美の声で、皆がラッコのキャビンの席についた。
ラッコのメンバー以外に、マリオネットのメンバーも一緒に、ラッコのキャビンで食事している。
夏のクルージング以降は、ラッコとマリオネットのメンバーは、すっかり仲良くなってしまっていた。
いつも一緒にヨットを出して、お昼になると、隣り同士で船を停泊して、お昼ごはんを食べていた。
そうめんレシピ
サッパリしてて美味しいです〜
材料は、そうめんに、そうめんのつゆ、ネギ2、3本、すりごま、梅干し、それにショウガです。
材料は全て、横浜マリーナ前のショッピングスクエア内にあるスーパーマーケットで調達できます。
「ネギ何本いる?」
「1本。あ、その束、1セットでいいわよ」
ルリ子は、麻美に言われて、2本1束になっているネギを買い物カゴの中に入れた。
「そうめんのつゆは、どれにする?」
「どれにしようか?」
「今日は、中華風というやつにしてみない」
洋子と雪は、そうめんのつゆが売っている棚の前で、いろいろなメーカーのそうめんのつゆボトルを見比べていた。
「あと、ショウガがいるね」
麻美に言われて、佳代がショウガを買い物カゴの中に投入する。
「すりごまは?」
「すりごまのボトルは、まだ船の中に入っているから大丈夫よ」
麻美は、佳代に答えた。
「あ、梅干しは、朝出てくるときに家の冷蔵庫から持ってきた」
麻美は、つけ加えた。
買い物を終えて、船に戻ると、ラッコのヨットのギャレーには、ちゃんとすりごまの入ったボトルが棚の中に収まっていた。
「あと、梅干しでしょう」
麻美は、自分のバッグの中からタッパーに入った梅干しを取りだして、ギャレーの端に付いている冷蔵庫の中にしまった。
作り方
1.ギャレーの下の戸棚に入っている大きめの鍋を取り出す。
2.鍋に、プラスチックの水のポリタンクから水を注ぐ。
3.お鍋をギャレーのガスストーブ、コンロにかける。
4.お鍋の水が、お湯に沸騰してくる。
5.そうめんを茹でる。
※そうめんは茹ですぎないように1分ぐらいでザルに上げる。
「ルリちゃん、そうめんを上げるから」
「はーい」
ルリ子は、麻美に言われてザルを持って表のデッキに出る。麻美も、茹で上がったそうめんの入った熱いお鍋を持ってデッキに出る。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
ルリ子がデッキから腕を伸ばして、海上にザルを持っている。麻美は、ルリ子の持っているザルの中に、茹で上がったお鍋のそうめんをあける。
お鍋のそうめんは、ルリ子が両手で抱えているザルの中に落ちる。そうめんと一緒にお鍋に入っていた熱いお湯は、ザルを通って、海の中に落ちていってしまう。
「OK!」
そうめんだけが残ったザルを持って、ルリ子はキャビンの中に戻っていく。麻美も、空っぽの鍋を持って戻っていく。
6.ザルのそうめんの周りに砕いた氷を散らす。
7.刻んだねぎ、梅干しも散らす。
8.棚のすりごまのボトルもそうめんにふりかける。
9.生姜をすりおろして、カップのそうめんのつゆに入れる。
これで、夏のそうめんの完成です。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。