この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第21回
斎藤智
「さあ、それでは皆さんがこれから乗るヨットの配属を発表します」
教壇に立っている横浜マリーナのスタッフがヨット教室の生徒たちに言った。
いよいよ、生徒たちが乗るヨットの配属が発表されるのだ。教室の後ろで振り分けられるのを待っているヨットのオーナー側にも緊張が起こっていた。
「まず、最初にヨットの船名を言ってから、そのヨットに配属になる生徒さんの名前を呼びますので、自分のヨットの船名が呼ばれましたら、そのヨットのオーナーさんは返事をして前に出てきてください」
マリーナスタッフが言った。
「それでは、まず始めはシリウスさん!」
「はい!」
マリーナスタッフに呼ばれたシリウスのヨットのオーナーさんは、大きな声で返事すると、教室の前に出た。
「シリウスのヨットの配属は、虻川さん、今野さん、松川さん…」
マリーナスタッフに呼ばれた生徒さんも、大きな声で返事して、教室の前に出る。だいたい、一艇につき、3、4名の生徒が配属になる。
教室の前で、これからお世話になるオーナーさんと対面した生徒たちは、オーナーに連れられて、それぞれ配属になるヨットの停まっているバースに移動していく。
「ラッコさん」
麻美は、マリーナスタッフに、自分のヨットの名前を呼ばれて、大きな声で返事すると、教室の前に出た。
ラッコの番の振り分けがきたのだ。
「ラッコさんへの配属は、永田さん…」
マリーナスタッフがラッコのヨットに配属になる生徒の名前を順番に呼んだ。全部で4人の生徒がラッコの配属になった。
最初に呼ばれた永田さんというのは、麻美がさっき、ロープワーク、ロープの結び方を教えてあげていた女の子だった。麻美は、可愛い女の子で一緒の船になれたら良いなって思っていたので、永田さんが呼ばれて、教室の前に出てきたときは嬉しかった。
「それでは、ヨットに移動しましょうか」
麻美は、ラッコの配属になった4人の生徒たちと初対面の挨拶をしてから、皆を連れてヨットのほうに移動した。
麻美も、永田さんと一緒になれてうれしかったが、永田さんのほうも、さっきロープの結び方がわからなかったときに、優しく教えてもらえたお姉さんの船に配属になれたのが嬉しかったみたいだった。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。