少人数で快適!ミニポケットクルーザー

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第37回

斎藤智

ラビリンスは、見た目も可愛らしいちょっと素敵なヨットだった。

ラビリンスの艇種は、マスコット28といった。

ラッコと同じく北欧製のセイリングクルーザーだった。オーナーは中村さん、小さなパン屋さんを経営している方だ。中村で、パン屋なので、よくあの大きなパンメーカーの社長さんと勘違いされていた。

でも、あの中村パンのような機械で大量生産ではなく、ひとつひとつ手作りで味のあるパンを焼いているので美味しく、隆は中村さんのお店のパンが好きだった。

中村さんのお店は、横浜マリーナからすぐ近くの商店街にあった。隆も、ヨットを乗り終えた後、横浜マリーナからの帰り道に、よくお店に寄ってパンを買って帰っていた。

ラッコを北欧で建造しているときには、隆も休みを取って、実際に建造中のラッコの姿を見に行き、船の確認をしていた。

だが、中村さんは、北欧には一度も行ったことがなかった。それどころかラビリンスの建造中のことをひとつも知らなかった。

中村さんがラビリンスと初めて出会ったのは、東海の名古屋港、そこにあるマリーナのバースにラビリンスは既に浮かんでいた。

以前のオーナーが、マスコット28の艇種を気に入り、北欧の造船所に発注し、日本の名古屋まで個人輸入したのだった。それを中村さんは、前オーナーから中古で購入したのだった。

隆のラッコやスローライフのように、造船所に発注して新艇で購入する人もいるが、中村さんのように既に進水しているヨットを中古で購入する人も多かった。

どちらかが良いということはないが、新艇の場合は、全くの新品で手に入れられるが、中古艇だと限られた予算内で、好みのヨットが購入できたりする。輸入艇の中古だと、煩わしい輸入手続きをしなくても良いなど、それぞれにメリットがあった。

ラビリンス、マスコット28はダブルエンダーのぷりっとしたお尻が可愛らしいミニポケットクルーザーだ。

ダブルエンダーとは、普通のヨットは波切りが良いように、船の先端が丸くなっているが、ダブルエンダーの船は、先端だけでなく船の後部も両端が丸くなっている。

ヨットの両端が丸くなっているのは、単に流線形のデザインが流行っているとかだけではない。メリット、デメリットは、前方からの波、風にも、後方からの波、風にも対応できるなどいろいろあった。

ラビリンスの後部デッキ上では、ティラーを操作して舵を取れるようになっていたが、その前方には、船内でも舵を取れるように小さなパイロットハウスが備わっていた。

船内のパイロットハウスはミニクルーザーなので、ラッコほど広くはないが、操縦席に腰かけるとすべての操舵装置が手に届くところにあり、操作性は抜群だった。

その横、左舷には小さなギャレーも備わっていて簡単な調理ができるようになっていた。パイロットハウスとデッキのコクピットはつながっていて、出来上がった料理は、ギャレーからすぐに手渡しでコクピットの人に出せるようになっていた。

コクピットには折りたたみのテーブルが収納されていて、それを出せばすぐに食事が楽しめるようになっていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。