ヨットシーズン到来!

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第140回

斎藤智

4月になって気温が暖かくなってきて、麻美は、ワクワクしていた。

街中で、ピンクのきれいな桜が咲いているのが、余計に麻美の心をワクワクさせていた。

横浜マリーナの前の道の街路樹も、桜の花びらでピンク色に満開だった。

最寄駅から横浜マリーナまでの道には、両側に桜の木が植えられているので、春は、一面ピンク色になるのだ。

しかも、ショッピングスクエアとマリーナの間は、緑のスペースになっていて、停泊しているヨットが見える公園になっていた。

その公園にも桜が咲いているので、ショッピングスクエアの屋上のベンチは、前の道の桜と海側、公園の桜に360度囲まれて、絶好の花見スペースになっていた。

ちなみに、横浜マリーナとショッピングスクエアの間にあるこの公園で、花見のシーズンにゴザなどピクニックマットを広げて座って過ごすことは禁止されている。

花見でない他のシーズンに、公園の芝生の上にマットやテントを広げるのは別に構わないのだが、花見のシーズンだけは禁止になっているので、利用される方は注意されたい。

別に、マットやテントを持ち運んでもいいが、このシーズンに、そういった類いのものを公園に広げると、ショッピングスクエアに常駐している警備員のお兄さんたちに注意されるから要注意だ。

横浜マリーナのショッピングスクエア屋上は、一年じゅういつでも、誰でも、営業中は行ける。

屋上には、ちょっとした庭園に、小さな遊園地、ペットショップがあって、小動物たちともふれあえるスペースになっていた。

春になると、そのスペースを無料で開放しているので、こちらの庭園にお弁当など持参で花見に来る人たちも多くいた。

「暖かくなってきたね!」

日曜日、横浜マリーナにヨットに乗りにやって来たルリ子が言った。

「本当、暖かくなってきたよね。ちょっと前までルリちゃんなんて、エスキモーのような分厚いもこもこのコート着ていたものね」

「確かに!ルリがあれを着ているのを見たときは、俺なんか、ヨットの上で動き回れるのかなって思っていたもの」

隆に言われて、ルリ子も苦笑していた。

「ラッコさんは、今年もヨット教室の生徒さんは募集するの?」

隆たちラッコの皆が、横浜マリーナの敷地内でおしゃべりしていると、暁の望月さんに声をかけられた。

「そうか。もうじき、横浜マリーナのヨット教室が始まる季節なんですね」

隆は、望月さんに言われて気付いた。

4月から、横浜マリーナでは、ヨット振興のために一般の生徒さんを集めて、クルージングヨット教室を開催している。

ルリ子や洋子たち皆も、去年の横浜マリーナのクルージングヨット教室に参加して、隆のヨットにクルーとして乗船するようになったのだった。

「佳代ちゃんも、ヨット始めてから2年目のシーズンになるんだね」

麻美は、隆と望月さんの話しているのを聞いて、佳代に言った。

「望月さんのところは、生徒さんの募集するんですか?」

「もちろん。うちは、若い男の子クルーだけだけどね」

望月さんは答えた。

望月さんのヨットは、ケプラーセイル、最新のレーシングセイルを装備しているヨットレース専門のレース艇だ。

いつも若い屈強な体の男性クルーばかりを乗せてセイリングしている。

望月さんのヨットのようなレース艇たちが、クルージングヨット教室に応募してきた生徒さんの中から若い屈強な男性の生徒を連れていってしまうので、隆たちのようなクルージング専門のヨットには、女性の生徒たちが多く集まってしまうのだった。

「うちは、今年は生徒の募集どうしようか?」

望月さんと別れて、ヨットを出航させた後で、隆は洋子に聞いた。

「また新しい仲間が増えるのも楽しいよね」

麻美が言った。

「ルリ子の後輩ができるんだな」

隆は、ルリ子に言った。

「そうか。先輩になるのか。私、後輩になにか教えられることあるのかな?」

ルリ子は、隆に答えた。

「船でのお料理の仕方とか、クルージングに行ったときの船内での泊まり方とか・・」

「それなら教えられるかも」

ルリ子は、麻美に言われて、笑顔で頷いた。

「でも、それって全部、ヨットのことじゃないんだけど」

ルリ子は苦笑した。

「いや、ヨットのことだよ。むしろ、船でのお料理とか寝ることとか、ヨットで生活するためには一番大事なことだろう」

「そうだよね!」

ルリ子は、隆に言われて、首を大きく縦に振って納得していた。

「ただ、あんまり増えすぎても、クルージングに行ったときに、キャビンの中で寝る場所が足りなくなってしまうだろう」

「それじゃ、一人だけ募集するようにしたら?」

「そうだな」

一人募集するという麻美の案が、今年のクルージングヨット教室におけるラッコとしては採用になったのだった。

毎年、クルージングヨット教室の話をするようになると、横浜マリーナでも、いよいよヨットのシーズンの到来を感じさせた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。