この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第121回
斎藤智
「なんだか、初セーリングの日に、とんでもない光景を見てしまったな」
中島さんは、マリオネットの事故を見た後、隆に話していた。
「入港時とかは、周りのウォッチは慎重にしないとですね」
隆は雪に話して、雪も隆に大きく頷いていた。
「お昼にしましょう」
麻美に言われて、皆はビスノーのキャビンの中でお昼ごはんとなった。マリオネットの人たちも、ビスノーのキャビンにやって来て、皆で一緒のお昼ごはんとなった。
「今日は、ラッコは出さなかったの?」
「ええ。皆で、ビスノーで出航しました」
隆は、中野さんに答えていた。
お昼ごはんを食べ終わると、マリオネットの面々は、自分たちのヨットに戻って、横浜マリーナに戻るために出航した。
今日一日、ビスノーにお世話になっている隆たちラッコの面々は、ビスノーの面々と一緒に、ビスノーを出航させて、横浜マリーナへと戻っていく。
マリオネットは、クルージングを終えて、横浜マリーナに戻って来た。
「お願いします」
中野さんは、横浜マリーナのクレーン内に、マリオネットを停泊させると、スタッフに上架をお願いした。
横浜マリーナのスタッフは、いつものように普通にマリオネットを上架した。
マリオネットの船体が、クレーンでゆっくり陸上に上がっていく。
横浜マリーナのスタッフは、クレーンの接触事故などが起きないように、マリオネットを細心の注意で上げて行く。
「え!」
マリオネットの船体の周りを、ぐるっと見回っていたスタッフが、船首のところに来て、一瞬驚いていた。
「大丈夫ですよ。それは、昼間に傷ついた傷ですから。クレーンで傷ついたのじゃないですから」
隆が、笑顔でスタッフに声をかけた。
それを聞いて、そのスタッフは、少し安心した顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「お昼に、八景島の港内で、海面から飛び出ていた杭に気づかずにぶつかってしまったんですよ」
隆の説明を聞いて、スタッフは驚いていた。
「あらあら」
「入港時は、いかにウォッチが大事かってことですよね」
「そうですね」
横浜マリーナのスタッフは、隆に答えていた。
「隆!片づけ始めるよ」
ビスノーからお昼ごはんに使った食器を持って、降りてきた麻美が呼んだ。
隆が、麻美のところに走って行くと、麻美が持っていた食器の入ったバケツを、隆に手渡した。
「今日の船の片づけは、洋子ちゃんや雪ちゃん、佳代ちゃんたちが、中島さんと手伝って片付けるから、隆は、私とルリちゃんとで、食器の洗いものしよう」
「はーい」
三人は、食器を持って、クラブハウスのキッチンに行くと、そこのシンクで洗い始めた。
「隆さん!何を買ってきたらいいですかね?」
洗いものが終わって、洗い終わった食器を持って、ビスノーに戻ろうとしていた隆たちに、中野さんが声をかけてきた。
これから、マリオネットのぶつかったところを修理するらしかった。
「そうですね。塗装と傷の個所を埋めるパテとかじゃないですか」
隆は答えた。
「いいよ。食器は、私たちで持って行くから、隆は、マリオネットの修理を手伝ってあげなよ」
隆は、持っていた食器を、麻美に渡すと、中野さんと一緒に、ショッピングスクエアに修理道具を買いに出かけた。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。