レースの表彰式

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第167回

斎藤智

隆がお風呂から出て、ホテルの廊下を歩いていると、後ろから誰かに飛びつかれた。

「おお!あけみちゃん」

隆は振り向いて、あけみのことを確認した。

「隆さん、久しぶり!」

「隆。あけみちゃんたちの船って、うちのヨットの少し向こうに停まっていたんですってよ」

「気付いていた?」

あけみの後から女湯を出てきた麻美と洋子が言った。

「そうなの。いっぱいヨットが停まっているから、ぜんぜん気づいていない」

「そうだよね。今年の連休の熱海港ってヨット多すぎだよね」

温泉を出て、皆でホテルのフロントでアイスクリームをなめながら休んでいた。

「お父さん!」

あけみが廊下を歩いてきた父に手を振った。

「ああ、隆君たちも来ていたの?」

あけみの父は、隆たちに気づいて話しかけた。

隆は、ホテルのフロントのソファに腰かけていた。

その隆の膝の上にあけみは、座っていた。

「それじゃ、夕食の食事を買ってからヨットに戻ろうか」

マリオネットの皆も、お風呂からあがって来て、ホテルを後にした。

「なんかさ、夕食は海鮮鍋とか食べたくない?」

麻美は、さっき女湯の中で女性たちで相談していた今晩の食事のことを隆に言った。

夕食のお買い物

「いいよ。そういえば夜は、まだまだ少しだけ寒かったものな」

「寒いってほどでは無かったけど、涼しかったよね」

夕食は、ヨットでシーフードの鍋を作ろうということになった。

「ね、隆さん。レースで優勝したんですって?」

あけみは、、隆に聞いた。

「そうだよ。マリオネットで優勝しちゃったよ。誰かに聞いたの?」

「さっき、お風呂の中で、洋子ちゃんに聞いたの」

麻美たちは、昨日の魚屋さんでお鍋に入れる具を選んでいた。

「麻美。先に行ってもいいか?」

隆は、魚を選んでいる麻美に聞いた。

夕方から今日のレースの表彰式があるのだ。それに参加したいため、早く港に戻りたかったのだった。

「うん。いいよ、先に行っていて。後からお魚を買って追いかけるから」

隆やマリオネットの乗員たちは、先に港に戻ることになった。

麻美と佳代、ルリ子、洋子、美幸たちは、魚屋で魚を買ってから戻ることになった。

表彰式

麻美たちは、夕食のお魚が入った袋を持ったまま、港に戻ってきた。

港の建物の前には、テントが張られていて、ヨットレースに参加した乗組員たちでいっぱいだった。

表彰式の前のところで参加者たちには、ビールやジュースが配られていた。

麻美たちも、ビールやジュースをもらって表彰式に参加していた。

「第3位はアクラングさん!」

表彰台のレース開催者が下位から順番に呼んで、表彰状を手渡していた。

4位までは、手渡されるのは表彰状だけだが、3位からは、ちょっとした景品も手渡される。

「間に合ったね」

麻美は、表彰式の会場で、洋子に言った。

「いつもだったら、一番最初に呼ばれるけど、今日は一番最後だから良かったね」

「本当ね」

麻美は、笑顔で頷いた。

今回のレースは、マリオネットは優勝、1位だから呼ばれるのは一番最後だ。

「一位、マリオネットさん」

マリオネットが表彰台で呼ばれて、オーナーの中野さんは立ち上がった。

中野さんが表彰台に行くと、大きな盾と表彰状をもらった。

それに熱海のマリンショップが今回のレースのスポンサーだとかで、マリントイレ一式をもらっていた。

「おーい、取りに来てくれ」

両手に盾と表彰状を持った中野さんに呼ばれて、マリオネットの男性クルーが表彰台にマリントイレを取りに上がった。

「クルーの皆さんも、全員前に出て一列に並んで下さい」

ヨット雑誌の舵から取材のカメラマンが来ていて、優勝艇の乗員を撮影するのだという。

「美幸も行って来いよ」

隆は、自分の横にいた美幸に言った。

美幸も、マリオネットの所属なので、表彰台に上がると、ほかのマリオネットのクルーと一緒にカメラの前に並んだ。

「女の子は、手前に並びましょうか」

カメラマンに言われて、美幸は、しっかり一番最前列で撮影してもらっていた。

「すごい!美幸ちゃん。全国誌の雑誌に載るんだ」

撮影の様子を見ながら、洋子は言った。

「舵なんて、普段は買ったことないけど、このレースが出る号は買わなくちゃな」

隆が言った。

「すごい!美幸ちゃん、一番前で一番レースで活躍したみたいじゃない」

表彰式の会場の中に、隆たちのことを見つけて、やって来た麻美が言った。

「本当だよな。一番の活躍者みたいだ」

皆は笑った。

「お魚、買ったの?」

隆は、隣りにやって来た麻美のショッピングバッグの中を覗いて言った。

麻美が横に来ると、生の魚の匂いがプーンとしていた。

表彰式が終わると、マリオネットの皆と一緒に、港の岸壁を歩いて、自分たちのヨットに戻った。

「すごい、優勝したマリオネットの商品が一番大きいじゃない」

麻美が言った。

マリオネットのクルーが二人がかりで、マリントイレ一式の入った大きな箱を持って歩いている。

「マリオネットのトイレ、調子が悪かったから、ちょうど良かったんじゃないですか」

隆が中野さんに言った。

麻美たちは、ラッコのキャビンに入ると、夕食のお鍋の準備を始めた。

マリオネットの男性クルーたちは、早速もらったばかりのマリントイレを開けると、マリオネットのトイレルームに取り付け始めていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。