この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第22回
斎藤智
「ただいま!」
麻美は、ラッコに配属になった生徒たち全員を連れて、ヨットに戻って来た。
ヨットには、後片付けを終えて、船内のサロンでくつろいでいた隆がいた。テーブルの上には、沸かしたばかりのコーヒーがポットに入っていた。
「あ、コーヒーを沸かしておいてくれたの。じゃあ、皆で頂きましょうか」
麻美は、生徒たちを皆、サロンのソファに座らせて、カップをキッチン、ギャレーから取り出した。生徒たち四人は、隆の前のソファに腰かけた。ラッコの配属になった生徒たちは、四人とも全員、女性ばかりだったのに、隆は驚いていた。
「うちの生徒さんは皆、女性ばかりなんだね」
「そうみたいね。きれいな子ばかりで、隆は嬉しいでしょう?」
生徒を目の前にして、麻美に言われて、隆は否定もできずにいた。
「こっちがオーナーの隆。私は麻美です」
麻美は、生徒たちにコーヒーを入れながら、皆に自己紹介した。
「永田ルリ子です。さっき、麻美さんにロープの結び方を教えてもらえました。宜しくお願いします」
今度は、生徒たちのほうの自己紹介がそれぞれに始まった。
「麻美に結び方を教えてもらったんだ。大丈夫だったか?麻美は間違った結び方を教えなかった?」
隆が笑いながら、麻美に言った。
「大丈夫でしたよ。優しく教えてもらえたので、わかりやすかったです」
ルリ子は、隆に答えた。
「私は、雪といいます。生徒さんには、若い方が多い中、30代ですが一生懸命頑張って、ヨットのことを覚えていきたいと思っていますので、よろしくお願いします」
四人の生徒の中で一番長身の女性が自己紹介した。30代と言うので、年齢を聞くと、麻美と同い年だった。雪は、長身で肩幅もがっしりとした体型の女性なので、これからが頼もしそうだと隆は思った。
「私は、洋子といいます。仕事は、電機メーカーでOLをしています。運動はあんまり得意なほうではないですが、ヨットには乗れるようになりたいと思っています」
洋子は、ストレートの髪が胸の少し上ぐらいのところまで伸びた細身の女性だった。
「私は、佳代です。」
最後に残った小柄な女性が自己紹介した。
彼女は、恥ずかしがりやなのか皆に聞こえるか聞こえないぐらいの小さな声で自己紹介していた。佳代は23才だった。ラッコの乗員全員の中で一番の最年少ということになる。あまり話が得意でないらしくて、初対面の皆にいろいろ質問をされて返事に困っていた。
「大丈夫よ。皆で仲良くヨットに乗って楽しみましょうね」
麻美は、佳代の横に席を移動して、佳代のことを抱き寄せると優しく言った。ルリ子と初めて会ったときに、ルリ子も可愛い子だなって思ったが、佳代も小柄で可愛い子だなって思っていた。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。