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岡田、入港

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第76回

斎藤智

「針路を左へ取ろうか」

いつもだと、大島の波浮を出て、東京湾方面に向かうときは、右方向へ針路を取って、大島を反時計周りで迂回していくのだが、今回は、左から時計周りで大島を周ろうということになった。

「元町の町だ!」

大島を左方向に時計周りで周ると、昨日行った元町の町を、海から眺められた。

港のすぐ側のお土産などを買った小さな商店街も、海から見えていた。

「昨日、ルリちゃんが、可愛いって言っていたワンピースを売っていたお店も見えるじゃない」

「本当だ。おばさん、元気!?」

お店の中にいるはずの店員までは、さすがに海からでは見えなかったが、ルリ子は、昨日、仲良くなったそのお店の店主のことを想像して、お店に向かって、デッキ上から手を振ってみせた。

「左からジェット船!」

佳代が、ステアリングを握っている洋子に向かって、熱海方向から元町港に走って来るジェット船のことを報告した。

「了解」

洋子は、ラッコの針路を保持しながらも、ジェット船が前方を横切るのを、注意深く気をつけていた。

ジェット船の船底には、スキー板のような板が付いており、船体を海上に浮かせて、ものすごいスピードで前方を横切っていた。

「速い!」

熱海と大島の元町港の間を運航している定期船のジェット船は、すごい高速で運航されている。

ジェット船が走って行った後の海には、真っ白い引き波が直線で残っていた。

その引き波に、ラッコやマリオネットは、突っ込んだ。船が縦に大きく揺られていた。

そのまま、元町の町を右に見ながら、大島の先の突端を回り込む。その突端の先に、岡田の港は見えていた。

元町の町がある辺りは、海から見ると平地になっていたが、岡田の港の周囲には、緑の断崖になっていて、その下のところに港だけがポツンと在った。

漁師の友だち

岡田港に入港するヨットを案内してくれているおじさんがいた。

ラッコ、マリオネットそして海王が、岡田港に入港すると、港の岸壁で大声で案内、ヨットやボートの誘導をしているおじさんと遭遇した。

「そっちのヨット、3艇での入港か!?」

そのおじさんは、ラッコたちに声をかけてきた。

隆が、おじさんに負けないぐらいの大声で返事をすると、おじさんは、3艇を漁港の隅に空いていた岸壁のところに誘導した。

まず一艇が、そこの岸壁に横付けして、残りの2艇は、その横付けしたヨットの横に順番に停めろということらしい。

ラッコたち3艇は、おじさんの誘導に従って、その場所に停泊した。

「アンカーを打たなくていいから楽だね」

佳代が言った。

いつものクルージングだと停泊するときは、アンカーを打って停めているが、今回は、岸壁に横付けできるので、アンカーを打たなくても、舫いロープだけで停められた。

「なに、どこから来たの?」

「横浜。昨日は波浮の港に泊まって、そこから岡田に来ました」

隆は、漁師のおじさんに声をかけられて、話をしている。

麻美も、いつの間にか隆たち二人の話に加わっていた。

おじさんは、漁師で、自分の船も岡田の港内に停めているらしい。

今朝早くに、漁に出て、魚を獲って戻って来たそうだ。漁が終わって、戻ってきたら、レジャーボートがたくさん入港してきていたので、午後からは、こうしてレジャーボートの停泊の誘導をずっとしているのだそうだ。

「大変ですね」

「ああ、でも、あんたたちで、もう港いっぱいだから、この後に来るレジャーボートには、全て入港を断って、波浮のほうに周ってもらうつもりだよ」

「そうなんですか」

「うん。あんたたちは、入港できてラッキーだよ」

「早目に、波浮を出てきてよかったね」

「ああ、船は日の出と共に、早く出航して、日が沈む前には、港に入港するようにするのが一番さ」

麻美に、漁師のおじさんが答えた。

「あんたたち、これから岡田の町を観光するのか?」

「観光は、もう夕方だし、しないけど、どこかお風呂入れるところに行こうと思っています」

「おお、そうか。あと一時間ほど、待ってもらえれば、俺が車で送っていてやるぞ」

漁師のおじさんは、一時間後に、港の仕事が終わったら、隆たちを、自分の車で、お風呂まで送ってくれることになった。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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