この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第42回
斎藤智
ラッコは、保田の漁港のポンツーンに停泊していた。
「それじゃ、漁港に行って料金を払って来るね」
麻美は、財布の入ったバッグを手に取ると、隆に言って船を降りた。
佳代も、麻美の後を追ってデッキに出てきた。麻美は、一緒に行くかって佳代のことも誘った。
「はい」
佳代も、麻美に続いて船を降りた。
漁港のポンツーンを上がって行くと、目の前に白い建物が建っている。そこが漁港の事務所だ。
ここの事務所で、ラッコが港内で今夜一泊させてもらうための停泊料を支払うのだ。建物の一階は、吹き抜けになっていて、獲れたばかりの魚が水槽でいっぱい泳いでいた。
「うわ!お魚さんがいっぱいいる!」
佳代は、叫んだ。
「本当に魚がいっぱいいるね。美味しそうね」
「美味しそう?食べたら可哀そうだよ」
佳代が、麻美に言った。
「でも、お料理したら、佳代ちゃんだって食べるでしょう」
「うん」
佳代は、麻美に笑顔で頷いた。
麻美は、事務所で停泊料を支払うと、事務所のスタッフにお食事券をもらった。保田の漁港の前には、「ばんや」という名前のレストランがあった。漁港で獲れた魚を美味しく料理してくれるレストランだ。漁港に遊びに来てくれたヨットやボートには、そこでのお食事券をもらえるのだった。
「今夜は、ここのレストランで食事しましょうね」
麻美は、もらったお食事券を佳代に見せながら、言った。
「ばんや」で出てくるお料理は、魚も獲れたてで新鮮なのでけっこう美味しい。レストランとしても人気があって、都心から車で、ここまでわざわざ食べに来るお客もけっこう多い。
「これから、今日はどうするの?」
「後で、皆で駅前まで歩いてみましょう。駅前に行くと、お風呂があるらしいから、お風呂に行きましょう。海で潮風を浴びているから体がびしょびしょでしょう」
「うん。温泉がいいな」
「佳代ちゃんは、温泉が好きなんだ。じゃあ、温泉を探してみましょう。温泉があるといいね」
麻美は、佳代の頭を撫でながら、ほほ笑んだ。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。