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坂井の奥さん

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第111回

斎藤智

麻美は、夜、自宅から坂井さんの家に電話をしていた。

「もしもし、坂井さんですか」

「はい。もしもし、坂井ですが…。あ、麻美ちゃん」

電話に出たのは、坂井さんの奥さんだった。

「この間の美味しいピーチのお礼を言おうと思って」

麻美が、坂井さんの奥さんに言った。

坂井さんの奥さんの実家は、福島の農家で、畑でフルーツを作っている。畑でできたピーチを、麻美のところにも送ってくれたのだった。

「今日は、日曜日だったし、いつものように、横浜マリーナに行って、ヨットに乗って来たんですよ」

「そうなんですか。楽しかったですか?」

「ええ。スピンを久しぶりに上げたんですけど、佳代ちゃんが大活躍で、マストの途中に少しひっかってしまったスピンを取るために、素手でマストをよじ登ったんですよ」

「まあ…」

「お猿さんみたいって、皆驚いていたの。あとね、お昼に、雪ちゃんがクッキーを焼いてきたんだけど、なんか材料の分量を間違えてしまったらしくて、すごく甘苦いクッキーだったのよ。それを、隆が美味しいよって言って食べて、ほかの皆も頑張って食べたものだから、なんだか我慢大会みたいになってしまって」

麻美は、電話口で笑った。

坂井さんの奥さんも、それを聞いて笑ってしまっていた。

「いつもルリちゃんとか洋子ちゃんが、よくケーキを焼いてくるから、たまには、雪ちゃんが自分でも焼いてこようと思って、作ったらしいんだけど、やっぱり慣れないことはするものじゃないねって雪ちゃんも笑っていたの」

麻美は、その日のヨットであったことを、坂井さんの奥さんに話していた。

「坂井さんも来れば良かったのに。マリオネットさんのところは、二人だけだったけど、出航していたよ」

「私たちは、この間でヨット教室は卒業になってしまったからね」

「卒業したって、洋子ちゃんとか皆来ているよ」

「皆さんは、お若いから。私たちじゃ、おじさん、おばさんだし、あんまりおじゃましたらマリオネット、中野さんにご迷惑でしょう」

「そんなことないわよ。雪ちゃんだって、生徒だったけど、私たちと同い年だもの」

「でも、ヨットは、私も、うちの主人も、すごく気に入っているの。そのうち、自分たちのヨットを購入しようと言っているのよ。そのときに乗り方を忘れてしまっていたら、麻美ちゃんたち、教えてね」

「ええ、もちろん!」

麻美は、電話を切った。

内緒の出航

坂井さん夫妻は、一か月ぶりに横浜マリーナに来ていた。

「久しぶりですね」

隆が、ヨットの出航準備をしながら、声をかけた。

「久しぶりで、乗り方を忘れてしまったかもしれない」

坂井さんの奥さんが、笑顔で苦笑してみせた。

「大丈夫よ。佳代ちゃんが教えてくれるから」

麻美が、佳代の肩をポンとたたきながら言った。

佳代は、笑顔で頷いた。

「もうベテランだものね」

麻美は、そんな佳代の頭を撫でた。

今日は、坂井さん夫妻は、ラッコに乗って出航する。

マリオネットは、中野さんが奥さんと娘のところに行っているので、お休みだ。

「一緒に乗りに来ませんか?」

マリオネットが、お休みなので、麻美が坂井さんのことを誘って、横浜マリーナに乗りに来たのだった。

「今日は、うちのヨットに乗るの?」

ルリ子が、坂井さんの奥さんに聞いた。

「そうなの。おじさん、おばさんで動き悪いけど、いろいろ教えてね」

坂井さんの奥さんは、笑顔でルリ子に答えた。

出航準備が終わると、横浜マリーナのスタッフに頼んで、ヨットを海に下ろしてもらった。

隆やいつものラッコのメンバー以外に、坂井さん夫妻も乗りこんで出航する。

「セイルを上げる?」

舵を握っている洋子に、雪が聞く。

洋子は、隆のほうを確認してから、雪に頷いた。

皆は、セイルをブームに縛っているロープをほどき、セイルを上げる準備をする。

ルリ子が、コクピット前、キャビンの入り口のところで、メインセイルのハリヤードをウインチにかけて、セイルを上げる準備を整えた。

「準備OKです!」

雪の声で、皆はセイルを上げ始めた。

何か手伝おうと、マストの周りにやって来た坂井さんだったが、ラッコの女性クルーたちの動きが早く、坂井さんはデッキに突っ立ったまま、皆の動きを眺めているだけだった。

「佳代ちゃん、うちのが、動き悪かったら、怒鳴って指示してやってね」

坂井さんの奥さんは、デッキでうろうろしているだけの自分の夫の姿を見て、佳代に言った。

そう奥さんに言われても、佳代は指示を出しにくそうにしていたので、麻美がマストのところに行って、メインセイルのシートを引いていた雪に、坂井さんにもやらせてあげてとお願いした。

「引いて下さい」

雪に言われて、マストのところにやって来た坂井さんは、雪とバトンタッチして、メインセイルのシートを引き始めた。

「こんな感じで、横に引くように引くと、上げやすいと思いますよ」

上げづらそうにロープを引いていた坂井さんに、雪がアドバイスした。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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