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三崎漁港名物〝うらり〟

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第212回

斎藤智

「美味しそうだな」

隆は、うらりの中を歩きながら、洋子に言った。

「隆さんって、お魚好きだよね」

「洋子だって、お魚が好きなの知ってるよ」

「まあね」

普段から魚好きの洋子が答えた。

「でもさ、洋子ちゃんは、普段からお魚料理が好きでしょ。隆さんの場合は、海に来たときだけだものね。私もそうなんだけど」

香織が言った。

「確かに、俺の場合は、海に出て、立ち寄った港で魚の姿を見ると、魚好きになるな」

隆は、香織に言われて、なるほどと思った。

「私も、そうだな。普段は、どっちかというと魚より肉だもん」

「お!そうなのか、肉食女子じゃん」

隆に言われて、香織は笑顔で頷いた。

「そうか、香織ちゃんは肉食女子だったんだ」

洋子は、笑った。

漁港に付いている魚の市場って、なんかグルグル巡っていると飽きない。いくらでも、お魚たちの姿を見ていられる。

といっても、隆、洋子、香織に雪のグループは、本当に単純にお魚の姿を早足で見て周っているだけだった。

一方、麻美、あけみたちを中心にルリ子、佳代のグループは、

「あ、ホヤだ!」

「アワビじゃない。獲れたてで、まだ動いているじゃない」

「このお値段って、東京じゃ考えられないよね」

麻美、あけみの主婦が二人もいるグループは、今夜の献立に使えそうかどうか、お値段は予算内に収まっているかどうか、など現実的なことを考えて、市場内を巡っていた。

「なんか買った?」

隆たちは、もう早々に市場の中をぐるっと一周し終わって、二周目は、気になったお店を中心にぐるっと周っていた。

二周目の途中で、まだ一周目を周っている最中の麻美たちのグループに追いついてしまったのだった。

「うん。佳代ちゃんが天ぷらにしたいって言うから、アジは少しだけ買ったけど」

麻美は、アジの袋を隆に見せながら、答えた。

「今夜って、食事はアジだけ?」

「これから買うわよ。ほかの食材も」

麻美は、せっかちな隆をみて笑った。

「主婦はね、お魚の新鮮さとか、家計の予算とか、いろいろ考えて購入するから、大変なのよ」

側のお魚のお店に、立っていた店番のおばさんが隆に言った。

「そうなんですか?」

「そうよ」

おばさんが隆に笑いながら言った。

「そうよ、隆。主婦は大変なのよ」

おばさんに言われて、麻美までもが、隆に言っていた。

「そうなのか。俺たちは、ただ出てきた魚を食べるだけだものな」

「う、うん」

洋子は、隆に同意を求められて、苦笑しながら頷いていた。

「洋子ちゃんだって、これから結婚して主婦になったら、考えるようになるわよね」

麻美は、洋子の頭を撫でてあげながら言った。

「ああ、ラッコのそういうアットホームな雰囲気、私、好きだわ」

あけみは、言った。

吞んべえたち

「ただいま」

隆たちは、うらりでのお買い物を終えて、ラッコのキャビンに戻って来た。

隆は、洋子や香織と荷物持ちで持たされていた買い物袋からお魚を冷蔵庫にしまい始めた。

「このお魚は、夜にすぐ食べるから、テーブルの上に出したままでいいわよ」

麻美たち主婦は、食材をしまう指示を出していた。

ラッコのパイロットハウスにあるメインダイニングでは、マリオネットの中野さん、クルーに、あけみちゃんの旦那まで一緒に加わって、既に飲み会がスタートしていた。

「麻美ちゃん、麻美ちゃん」

今年からマリオネットのクルーになった美幸が、麻美に声をかけた。

「なあに?」

麻美がパイロットハウスの美幸に返事した。

「ここにあったウイスキーのボトル開けさせてもらっちゃったんだけど」

ラッコのパイロットハウス、操舵室、ステアリングの付いている後ろにあるバーカウンターの扉を指さして報告した。

「ああ、どうぞ。私も、隆も、うちのラッコのメンバーもお酒あまり飲まないから、その中のは、全部飲んでくれたほうがありがたいわ」

麻美は、答えた。

「中野さん、飲んでもいいって」

美幸が言うと、すでに顔の頬が少し赤くなっている中野さんが、

「そうか。それじゃ、お言葉に甘えて全部いただこうか」

豪快に笑った。

「でも、飲みすぎには気をつけてくださいね」

「あ、はい!麻美ちゃんに怒られちゃったよ」

中野さんは、麻美に言われて、ちょっと嬉しそうに苦笑していた。

「私も手伝おうか」

美幸が、これから食事の準備をしようとしている麻美のところにやって来て、言った。

「うん。でも、これだけ女性もいっぱいいるけどね」

麻美は、美幸に返事した。

「美幸ちゃんも、うらりに買い物一緒にくれば良かったのに」

麻美は、中野さんたちマリオネットのメンバーと船に残っていた美幸に言った。

「おもしろかったよ。いろいろなお魚がいっぱいいて」

ルリ子や香織も、美幸に言った。

「それじゃ、そちらの三人で、このお魚をさばいてもらおうかな」

麻美は、買ってきたお魚を、キッチン隣りにあるダイニングに腰かけていた香織たちに手渡した。

手渡された香織たちは、ダイニングテーブルの上に、まな板を置くとさばき始めた。

美幸と入れ替わりで、雪がパイロットハウスのダイニングで、中野さんたち男性陣のお酒の相手をしていた。

あけみも、はじめは料理の手伝いを何かしようとキッチンにいたのだが、料理はラッコの女性メンバーたちに任せて、パイロットハウスのキャビンに移って、男性陣と一緒にお酒を飲んでいた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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