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三崎港で食事

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第200回

斎藤智

暁が港に停泊し終わると、望月さんは自分の船に乗り込んできた。

「お疲れさま!」

望月さんは、隆に声をかけた。

「お疲れさま。無事、何事もなく横浜マリーナから三崎まで到着できましたよ」

隆は、笑顔で答えた。

「ああ、カレーのいい匂いがするね」

望月さんは、キャビンの中に入ると麻美に言った。

お昼に食べたカレーのにおいがまだキャビンに残っているようだった。

「レトルトじゃないね」

「ええ、お鍋がなくて、ちょっと困ったんですけど…。なんとか作れました」

「すごい!さすが、麻美ちゃん。よくこのヨットでカレーを作れたよ」

望月さんは、麻美のことをほめてくれた。

望月さんは、キャビン内のベンチに腰掛けた。

後片付けを終えた隆と雪も、キャビンに入って来ると、ベンチに腰掛けた。

皆が入って来て、座るところが足りなくなると、望月さんはキャビンの隅にあったアイスボックスの上に腰かけると、空いた席をほかの子にすすめた。

普通に、アイスボックスやら階段のところに腰掛けてしまうのを見て、麻美は思わず笑ってしまった。

「なにが、おかしいの?」

隆は、麻美に聞いた。

「いや、皆さんが普通に椅子じゃないところに座ってしまうから…」

麻美が言った。

「だって、しょうがないじゃん」

「レース艇は、これが当り前よ。もっと足りなくなると、前のキャビンからトイレに使っているバケツを持ってきて、座ったりもしているよ」

望月さんが言った。

「やっぱ、暁さんは体育会系なのね」

麻美は、いつもラッコでのんびりセイリングしていることとの違いに驚いていた。

「夕食は?」

「ここじゃ、食べれないから、どこか近くのお店に食べに行きましょうか」

皆は、夕食を三崎港の近くにあるまぐろ料理のレストランで食べることにした。

いちおう、食べ終わったら、そのまま電車で帰れるように、荷物を持って、暁の戸締りをしっかりしてから出かけた。

漁港の漁師さんに頼んで、次の週に伊豆まで廻航するまでの一週間だけ停めさせてもらうので、セイルもしっかり縛って、停泊中にバラバラにならないように結んだ。

「なにが食べたい?」

「マグロのお刺身」

佳代は、麻美に聞かれて答えた。

「それじゃ、マグロのお刺身食べようね」

皆は歩いて、港のすぐ近くにあるレストランに移動した。

ヨットを置いて電車で帰る

暁は、暗い港の中で真っ白な船体がきれいに輝いていた。

「ここからだと、浮んでいるのがよく見えるね」

麻美は言った。

皆は、三崎漁港のすぐ目の前にあるバス停で、帰りのバスの時刻表を確認していた。

「いくらでも、まだバスはありそうだから、その前に夕食食べて行こう」

隆たちは、バス停の前のレストランに入った。

三崎漁港の前には、多くのレストランがあった。

そのレストランの多くは、三崎で上がったマグロ料理をメインにしていた。

「ここ、美味しいの?」

麻美は、何の迷いもなく一軒のレストランに入った隆に聞いた。

「俺も、初めて…」

「前に来たときに、ここがけっこう美味しかったんだよ」

望月さんが麻美に言った。

「望月さんのおすすめなら安心ですね。隆の味覚だと危ないけど…」

麻美が答えた。

「前に、ちょっと古くなったゼリーを美味しい、美味しいって食べてたじゃない」

麻美は、隆に言った。

「ああ、それってだいぶ昔の話じゃないか」

隆は言った。

「だいぶ昔っていっても数年前のことでしょう」

「そんなことがあったんだ」

香織が聞いた。

「そう。うちの実家で何を食べているの?って聞いたら、リビングで隆とうちのお父さんが、捨てようと思ってた古いゼリーを食べていたの」

「でも、酸味がきいてて、あれってけっこう美味しかったよ」

「酸味って、オレンジかグレープフルーツのゼリーじゃあるまいし、いちごのゼリーに酸味なんかあるわけないじゃない」

麻美が苦笑した。

「あれから隆の美味しいは、ちょっと信じられなくなったのよね」

麻美が笑った。

「で、何を食べる?」

隆は、メニューを開いて言った。

「お刺身。佳代ちゃんが食べたいのよね」

「とりあえずビール。で何かお刺身を盛り合わせてください」

隆が注文した。

「カマありますか?」

望月さんがカウンターの店主に聞いた。

「ありますよ!今日はいいの入ってます」

「それじゃ、それ下さい」

望月さんは、マグロのカマを注文した。

「カマは大きいから、一つ頼んで皆で突っつきましょう」

望月さんは、隆たちに言った。

「カマってなあに?」

佳代が小声で麻美に聞いた。

「カマってマグロの頭を焼いたもの。美味しいから、出てきたら食べようね」

麻美が答えた。

「皆さん、お若い方ばかりでいっぱい食べれそうだから、こちらもどうぞ」

お店のおばさんが、ビールと一緒にミニまぐろ丼を人数分サービスで持ってきてくれた。

「マグロのお刺身乗っているよ」

麻美が佳代に言った。

佳代が嬉しそうにミニまぐろ丼を食べていると、まもなくお刺身の盛り合わせもやって来た。

麻美が、その盛り合わせの中から、マグロを中心に小皿に取って佳代に渡した。

「私、貝がだめなの」

「私は、貝がお刺身の中でも大好き」

皆が、それぞれに好きなものを取り分けていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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