京急バス

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第201回

斎藤智

隆は、食事を食べ終えてレストランから出てきた。

「ああ、お腹いっぱいだ」

隆は、横をいっしょに歩いていた洋子に言った。

「わたしも、お腹いっぱい。マグロ美味しいんだもん、ちょっと食べすぎた」

洋子も言った。

「わたしも食べ過ぎた」

「ルリちゃんは、いつも食べ過ぎね」

洋子が、ルリ子の一言にツッコんだ。

ルリ子は、洋子のツッコミにしっかり笑顔でぼけてみせていた。

「何やってるの!バスが出ちゃうよ」

バス停のほうから大声で麻美が三人のことを呼んでいる。

麻美の前には、青いバスがやって来て停まっていた。

隆と洋子、ルリ子はあわててバスに向かって走っていく。

「大丈夫ですよ、まだ時間ありますから」

走ってきた三人に、バスの運転手さんが笑顔で答えてくれた。

三人は、バスに乗ると後ろの座席、皆のいるところまで進んだ。

バス代は、もう予め麻美が払ってくれていたので、乗るだけでOKなのだ。

「青い京急バスだね」

「三崎というか、三浦半島はほとんど京急バスしか走っていないからね」

佳代は、麻美の隣りの窓際の席に腰かけて外を眺めていた。

隆は、麻美の反対側の空いている窓際に腰かけて、その内側に洋子が腰かけた。

その前の席にルリ子と香織、その反対側に雪と望月さんが座っている。

「麻美ちゃん、ごめんね」

洋子が麻美に声をかけた。

「うん、だいじょうぶよ」

麻美は、洋子がなんで謝るのかわからずに答えていた。

「なんかあったの?」

「洋子ちゃんが、隆さんの横に座ったからでしょう」

ルリ子が、洋子の謝った理由を洋子より先に麻美に言った。

「え、なんで?別にいいんじゃないの」

「だってね、やっぱ麻美ちゃんが隆さんの隣りに座りたいでしょう」

ルリ子が言った。

「え、別にとくに隆の横に座りたくないよ」

麻美が不思議そうに返事をした。

「ええ、本当に」

前の席の雪が、後ろに振り向いて、隆に聞き返していた。

望月さんも後ろを振り向いて、麻美の顔を見ながら笑っている。

まもなくバスは、三崎口の駅に到着して、皆はバスを降りた。

バスを降りたら、三崎口の駅から横浜までは今度は電車に乗り換えだ。

青い京急バスから赤い京急線だ。

京急の品川行き、快速特急に乗ると隆の座った席の横を洋子が麻美にすすめる。

洋子は、その後ろの席に佳代といっしょに腰かける。

ルリ子と香織は、その反対側の席に腰かけて、その後ろに雪と望月さんだ。

「え、別にわたし隆の横に座りたくないよ」

照れる麻美を押しながら、

「まあまあ、ごゆっくりして」

ルリ子が腰かけさせる。

麻美はルリ子に言われるままに隆の横に腰かける。

「なに、麻美が俺の横にくるの」

「うん、いいでしょう。別に」

麻美が答える。

「まあ、麻美とは会社でもいつでも側にいるから横じゃなくてもいいんだけど」

「そういうこと言わずに、皆がせっかく進めてくれたんだから」

麻美は、隆の頭を撫でながら言った。

電車は三崎口の駅を発車して、横浜を目指していた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。