この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第28回
斎藤智
佳代は、小柄でボブヘアーの可愛らしい女性だった。
佳代は23才。
ラッコの船の乗員の中では一番若かった。目が大きくクルってしていて、可愛らしい子だった。背の小さいところが、余計に可愛らしさを引き立たせていた。雪や麻美と並ぶ身長差があって凸凹コンビだった。
ほかの乗員が皆、自分よりも年上ということもあってか、最初のうち、佳代はあまり口数も少なくとてもおとなしかった。初めからおしゃべりだったルリ子とは対照的だった。
おとなしくて、小柄でヨットでセイルを上げるときなども、ブームの上のセイルに手が届かないときもあって、隆は彼女がヨットをやっていけるかなって心配していたが、何回かヨットに乗っていて、皆とも慣れてくると、佳代の口数も多くなってきた。
普段、キャビンの中で食事をしているときなどは、佳代は最初のイメージ通り、おとなしい子だったが、セイリング中は、小柄の体型を活かしてけっこう動きも素早く、前のデッキ上でセイルが絡まっていたりすると、誰よりも素早く前のデッキに飛んでいき、絡まったセイルを直していた。隆が、先に絡まったセイルを見つけて、直しに行こうと揺れるデッキ上を落ちないように捕まりながら移動していたときも、佳代はピョンピョンと身軽にとび跳ねながら前のデッキに移動していたりする。
「佳代ちゃん、身軽だね」
麻美が前デッキから戻って来た佳代を誉めると、佳代は、誉められたことを嬉しそうにしながら笑顔で頷いて、麻美の横に腰かけたりしている。
麻美は、いつも麻美が話しかけると、ニコニコして笑顔が可愛い佳代のことを妹のように可愛がっていた。自分と同い年の雪とも仲が良かったのだが、雪とはまた違った感じで、妹のような佳代とも仲が良くなっていた。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。