観音崎の灯台

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第40回

斎藤智

観音崎の真っ白な灯台がだんだんと近づいてきた。

横浜マリーナを出航したラッコとマリオネットは、千葉の保田を目指して走っていた。

横浜港内に停泊しているタンカーや貨物船の間を通り過ぎていくと、小さな島が見えてきた。猿島という名の島だ。無人島なのだが、横浜の金沢八景から観光用の定期船が運航していて上陸することができる。島には、昔に使われていた砲台などが展示されていて、海岸にはバーベキュー場もあり、家族で訪れるとけっこう楽しめる島だ。

その島の脇を抜けて行くと、半島があり、半島の突端には、真っ白い灯台が建っている。

観音崎の灯台だ。

観音崎の海岸には、京急のオーションビューホテルが建っており、若いカップルなどに人気のスポットだ。

横浜マリーナからクルージングに出かけると大概、その観音崎の灯台をまずは目指していくことが多い。

目的地の千葉の保田は、観音崎の半島を少し通り越した辺りから、垂直に東京湾を横断していくとちょうど対岸にある。

「東京湾を横断する前に、お昼ごはんを食べてしまいましょうか」

麻美が、船内のギャレーでお昼ごはんの支度を始める。

東京湾の中央は、大型船の航路になっているため、大型のタンカーや貨物船、旅客船がひっきりなしに通っている。

ヨットやボートが千葉に向かうためには、大型船に気をつけながら、その間を縫って横断していかなければならない。横断中は、左右からやって来る大型船に、気を配らなければならないため、操船にも気を使う。

その前に、先にお昼ごはんを食べてしまおうという計画なのだ。

佳代とルリ子が、麻美の後から船内に入って、ギャレーでお昼ごはんの支度を手伝う。

雪と洋子は、デッキで隆といっしょに船の操船を手伝っている。

今日のお昼は、パスタの予定だった。

お鍋に水を張って、お湯を沸かし、スパゲッティをゆでる。その隣りのレンジでは、パスタにかけるミートソースをフライパンで調理している。

ルリ子は、付け合わせ用のサラダの野菜をテーブルにまな板を置いて、包丁で切っている。

パスタの美味しそうな匂いが、船内に充満してきた。

その匂いは、開いている窓から出て、デッキにいる隆や洋子たちのところまで匂ってきた。思わず隆と洋子のお腹がぐーと鳴った。

「お腹、空いてきたね」

隆と洋子は、顔を見合わせて笑ってしまった。

まるで隆のお腹に連動して、洋子のお腹までも、ぐーと鳴ってしまっていた。

「食事、できたよ!」

船内から顔を出した麻美が、デッキの皆を呼んだ。

「中で、佳代ちゃんがステアリング握ってくれているから、早くキャビンに入っていらしゃいよ」

麻美に言われて、デッキで操船していた三人も、船内に入って来た。

外のステアリング、舵を離しても、船がどこかに行ってしまわないように、船内のステアリングを、佳代がちゃんと握っていた。

普通のヨットと違って、船外だけでなく、船内にも操船できるステアリングの設備が整っているのが、モーターセーラーの良いところだ。

「もうすっかりベテランじゃん」

隆は、舵を取っている佳代の頭を撫でてあげた。

隆に誉められて、佳代は嬉しそうにしながら、舵を取っていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。