この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。
クルージング教室物語
第2回
斎藤智
海野隆は今はやりのIT実業家だった
彼の愛艇は33フィートのモーターセーラーだ

海野隆がヨットと出会ったのは小学生のときだった
彼には、近所に幼稚園入園前からとても仲良くしていた幼馴染みの男の子がいた
隆は、どちらかというと勉強よりも運動が得意な性格だったが、その幼馴染みは、隆とは反対に勉強はよくする子だったが運動があまり得意ではない子だった
性格がまったく正反対な二人だったが、小さい頃からなぜかとても仲が良かった。いじめっ子にいじめられているところを見かけると、けんかの強い隆はよく手助けしていた。逆に勉強でわからないところがあると、隆はよく彼に教わっていた
隆は、そんな幼馴染みのことを少しぐらい運動が苦手でも良いと思っていた。でも、彼の母親はそんなわが子にもっと男の子らしく強い子になって欲しいと思っていた
その母親の義理の兄は、横浜のヨットハーバーでヨットを趣味にしていた。その兄が仲間とともに今度、ヨットハーバーで子どもヨット教室を立ち上げることになって、そのヨット教室に参加する子どもを探していた。そのことを兄から聞いた母親は、これはうちの子を運動に興味を持たすチャンスかもしれないと考えた。母親は、わが子にそのヨット教室に参加するように命令した
最初は、ヨット教室への参加を拒んでいた彼だったが、一年間だけという母親との約束でヨット教室に参加することになった。
「でも一人で通うのは寂しいよ。隆君と一緒に通いたい」
彼は、母親にそうお願いした。母親は隆の母親に相談して、隆も彼と一緒にそのヨット教室に毎日曜日は通うことになった。
一年間、母親との約束を守って頑張ってヨット教室に通った彼は、約束通り一年後にヨット教室をやめてしまった。しかし、隆のほうは、最初は誘われて始めたヨット教室だったが、ヨットの魅力にはまってしまってその後、高校2年生までずっと毎日曜日、一度も休むこともなくヨット教室に通い続けたのだった。
高校3年生は大学受験のため、ヨットを一時中断していたが、大学に入学後には、またヨットに乗り始めるようになっていた。
斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。
横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。