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救助活動

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第51回

斎藤智

麻美は、無線でマリオネットと交信していた。

「エンジントラブルですか?止まってしまっているのですか」

麻美は、無線でマリオネットと話している。

「エンジンがぜんぜんかからないのですよ。それでセイルをフルに出してセイリングしているのですが、風が無くて走らなくて、夕方までに三宅島まで着けそうもないのですが…」

「そうなんですか。今、どのへんを走っていらしゃいますか?」

「ちょうど新島の向こうの…エンジンが掛らなくて困っているんです」

「そうなんですか…」

麻美は、マリオネットに無線で返事をしながら、佳代に外にいる隆を呼んでくれと頼んでいた。

マリオネットに、エンジンが掛らないと言われても、麻美自身では、いったいどうしたら良いものかわからなかった。

佳代が表にいた隆と洋子を連れて、戻って来た。

「エントラだって?」

「そうなのよ。無線でそう言われたのだけど、どうしたら良いのかな?」

「今、どこらへんを走っているって?」

「新島の向こうだって」

「新島の向こうでは、どこだかわからないよ。ラッコだって、今、新島の向こうを走っていると言えば、そのへんを走っているし…」

隆は、麻美に言った。

「無線、まだつながっているの?」

「うん」

麻美は、隆に無線機のマイクを手渡した。

「こちら、ラッコ。マリオネットさん、聞こえますか?」

「こちら、マリオネット」

「マリオネットさん、今、どのへんを走っていますか?」

「新島の向こう辺りをセイリングしています。どうぞ」

マリオネットは、ちょうど麻美が隆に伝えたのと同じことを言っている。

「新島の向こう…というのは、だいたいどのへんですか?北緯とか東経でわかりますか?」

「北緯とかは、よくわからないですが、新島の裏側辺りです」

それでは、救出に行きたくても、どこに向かったら良いのかわからない。

「マリオネットさんには、GPSが付いていましたよね。GPSの現在位置に表示されている北緯東経を読んでもらってもいいですか」

「あ…、はい。北緯…」

マリオネットの中野さんは、隆に言われて、慌ててGPSの画面を見ると、そこに表示されている北緯東経を読み上げた。

無線から聞こえる中野さんの緯度を、すっかりGPS、航海計器の操作に慣れてしまった洋子が、素早くラッコのGPSに入力していく。

入力し終わって、画面を地図に切り換えると、そこにマリオネットの位置が表示されていた。

「今のラッコの位置からだと、ちょうど後ろのほうに戻った辺りだな」

隆に言われて、佳代は表に出ると、ラッコの後ろのほうを眺めた。

「あった!」

佳代は、そこにマリオネットの白いセイルを見つけて叫んだ。

隆と麻美も、佳代の指さした方角を一生懸命探したが、マリオネットの姿は見つけられなかった。佳代の視力は、両目とも2.0と恐ろしく良かった。

「とりあえず、そちらに向かおう」

隆は、コクピットに行き、ステアリングを握っていたルリ子から舵を引き継ぐと、佳代にマリオネットの方角を確認してもらいながら、そっちに向かって走り出した。

海上でのエンジン修理

マリオネットは、海上をふらりと漂っていた。

セイルは、メインとジブの2枚ともフルに広げているので、メイン一枚で機帆走で走っているラッコよりも、広げているセイルの枚数は多かった。

しかし、風が無風に近いため、セイルが孕まず、バタバタしているだけで、まさに海の上で漂っているという表現がぴったしだった。

「左舷に付けるから、フェンダーをぶら下げてくれ」

隆に言われて、ほかのラッコの乗員たちは、船の左舷にフェンダー、防舷材をぶら下げた。

ラッコは、新島の沖合で、マリオネットに機走でゆっくりと近づくと、接舷した。マリオネットのクルーたちは、右舷にやって来て、マリオネットとラッコがぶつからないように、手で船を押さえている。

「エンジン、大丈夫ですか?」

隆は、中野さんに声をかけながら、洋子と一緒にマリオネットに乗り移った。

中野さんは、マリオネットの船内に先に入ると、パイロットハウスに付いているエンジンのスイッチをひねってみせた。エンジンは、うんとも、すんとも言わず、静かなままだった。

「エンジンは確認してみましたか?」

隆は、洋子とマリオネットの船内に入ると、入り口のところにあるエンジンの入っているボックスのフタを開けた。中からエンジン本体が姿を現した。

「エンジンかけてみてもらえますか」

隆に言われて、中野さんは、もう一度、エンジンのスイッチをひねる。

隆は、エンジン本体上部にあるレバーを何度か左右に動かしてみる。エンジンがかかりそうな気配があった。

「エア噛んでいるんじゃないですか」

隆は、燃料の流れていく透明ホースの中に、燃料と一緒にあぶくが入っているのを発見した。

「あ、本当だ!取れますかね」

中野さんは、隆の指さした燃料ホースの部分を覗きこんで言った。

隆は、洋子と協力しながら、プシュプシュと燃料ホースの中の空気を、少しずつ上に、上に移動しながら取り除いた。

「これで、かかるんじゃないですか」

隆に言われて、中野さんが再度、エンジンのスイッチをひねる。今度は、勢いよくエンジンが周ってかかった。

「かかった!かかった!」

中野さんは、エンジンが無事にかかったのを確認して、大喜びしていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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