ヨットを出品

目的地変更

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第227回

斎藤智

遅めの朝ごはんを食べた後、皆は暑いデッキの日差しの当たらない影を見つけて、そこでのんびりしていた。

ステアリングを握っている佳代の上には、大きなビーチパラソルが開かれていた。

「気持ちいい~」

夏のクルージングが初めての香織は、日陰のデッキチェアに寝転びながら、言った。

「夏のクルージングは、このまったり感がいいよな」

「うん」

隆と洋子が言った。

「麻美さんも、ここ来て、一緒にゴロンしよう」

佳代の横にいた麻美は、香織に誘われて、デッキチェアの香織の横に寝転がった。

「ああ~、ここじゃ、すぐに寝ちゃいそう」

一瞬横になった麻美は、すぐに体を起こした。

「別に寝たっていいじゃん」

「うん、そうよ」

洋子と隆に言われたが、

「今、寝たら夜に寝られなくなちゃうよ」

麻美は、返事した。

「私、お昼寝した日も、夜もぐっすり寝れる」

「それは若いからよ」

麻美は言った。

「確かに、今回のクルージングはマリオネットが一緒じゃないから夜寝れるものな」

「そうか、中野さんとか一緒だと、麻美ちゃんずっとお酒につき合わされて寝れないもんね」

雪が奥から顔を上げて言った。

しばらく皆がまったりしていると、麻美の電話がキャビンで鳴った。

「麻美ちゃん、電話!」

パイロットハウスでナビを見ていたルリ子が、パイロットハウスの屋根から顔を出して、麻美を呼んだ。

麻美は、起き上がってキャビンに入る。

「はい、もしもし」

麻美は、電話を探して出た。

「あ、こんにちは」

麻美は、電話の相手と話している。

「ぜんぜん掛からないのですか?」

麻美は、電話の相手に何かを相談されているようだ。

「ええ、そうなんですか。ああ、部品のこととか言われても、私じゃ、よくわからないので」

麻美は、言った。

「ルリちゃんに代わりますね」

隣りにいたルリ子は、いきなり自分の名前を呼ばれて驚いていた。

「ルリちゃん、中野さんなの。ちょっと代わってもらえない」

麻美に、電話を手渡されて、ルリ子は電話に出た。

麻美は、ルリ子に電話を渡すと、表の隆のところに行った。

「中野さんの話だと、相模湾の真ん中でエンジンが完全にストップしちゃって、風も無くて動かなくて、ゆらゆらしているんだって」

隆に報告した。

「そんなこと言われても、ぜんぜん逆方向だし・・」

隆は、麻美から聞いて、頭をかいていた。

救助船

「だって、風が無くて相模湾の真ん中で動けないんだよ」

麻美は、隆に言った。

「そんなこと言われても、こちらだって大島の沖合で風は無いんだけど」

隆は、麻美に言った。

「動けなくはないけどね」

ステアリングを握っていた洋子が答えた。

「で、どうしろって言っているの?」

「え、だから、助けに行ってあげたら?」

隆に聞かれて、麻美は答えた。

「それは無理でしょう。こっちは大島の沖合にいて、向こうは相模湾の真ん中にいるんだよ」

「無理なの?」

「ぜんぜん位置が違うもの」

隆や雪は、麻美と一緒にキャビンの中に入った。

キャビンの中では、ルリ子が中野さんと電話をしながら、ナビにマリオネットの位置を入れていた。

「どうなの?」

隆は、ルリ子に聞いた。

ルリ子は、電話をしていて隆のほうには答えられない。

隆は、ルリ子の入力したナビの画面を覗き込んだ。

大島の沖合に、ラッコの進んできた航路が線になって記入されていた。

その別の場所、相模湾の中央よりは少し三崎辺りに赤く光っている場所があった。

「マリオネットはここなの?」

隆が、ルリ子に聞くと、ルリ子はその赤いところを指さしながら頷いた。

「そんなに遠くないじゃない」

ぜんぜんわからない麻美が言った。

「けっこうあるよ」

佳代が、ナビのチャートを覗きながら、麻美に言った。

「そうなの?」

麻美は、佳代のことを両手で抱えながら答えた。

「行くとしたら、大島をいったん岡田港を抜けて、かわしてからグルッと回らなければならないよね」

雪も、麻美に説明した。

「そうか、けっこう大変?」

麻美は、雪に聞いた。

「はい、麻美さんに代わりますね」

麻美は、ルリ子から電話を手渡された。

「あ、もしもし。ええ、そうですね」

麻美は、電話に出て中野さんと話している。

「ええ、ルリちゃんがそちらの位置とかナビに入力したみたいなので、ちょっと隆とも相談して、また電話しますね。少し待ってくださいね」

「無線で入れさせればいいじゃん」

隆が電話をしている麻美に言った。

「中野さん、なんか、うちの隆が無線に入れたらって言ってるんですけど」

麻美は、電話を切った。

「無線を入れるって」

麻美が隆に言ったのを聞いて、ルリ子はラッコの無線機のスイッチを入れた。

「で、ルリちゃん。マリオネットの様子はどうなの?」

麻美が電話を終えて、隆がルリ子にマリオネットの状況を聞いた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。