夕食

この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第213回

斎藤智

夕食がはじまった。

結局、本日のレシピはお刺身とお鍋になった。

人数がいるときは、作るのが楽なお料理だった。

テーブルの真ん中に、お鍋を用意しておいて、お鍋が出来上がるまでの間に、先にお刺身を食べておけばいいのだ。

お刺身は、お酒を飲む人たちには、格好のおつまみにもなった。

ラッコのキャビンは、パイロットハウスとその前部のキッチン前に2か所のダイニングサロンがある。

マリオネットなどのおじさんたちは、パイロットハウス側のサロンでお酒を飲んでいた。

隆たちは、キッチンでの料理の後に、そのままキッチン側のサロンでの食事になった。

パイロットハウス側のサロンには、マリオネットとあけみちゃん夫妻に、雪と麻美が一緒に食事していた。

美幸は、マリオネットのメンバーだったが、下のキッチン側で、ラッコのメンバーたちと食事していた。

「飲む?」

隆は、美幸にビールを注いであげた。

「美幸ちゃんは、けっこうお酒飲めるんだね」

お酒の飲めないルリ子が、美幸に言った。

「私も、そんなに飲めるわけではないよ。ビールぐらいしか飲めないもの」

美幸は、答えた。

「マリオネットは、中野さんとかけっこう飲むでしょう」

「うん」

「明日はどうしますか?」

あけみが皆に聞いた。

「ラッコは特にどこという予定はないみたいよ」

麻美が答えた。

「それじゃ、浦賀に行きませんか?浦賀の町は、けっこう歩いてみると、おもしろいところあるみたいですよ」

「いいかもね。そしたら船は、ここに置いておくんですよね」

「え、いや、浦賀、ベェラシスマリーナまで行って、そこに停泊してから、街中を周れるの」

「そうなんだ、浦賀もヨットで行けるなんて知らなかったわ」

クルージングでは、ほとんど航路とかを考えていない麻美は、返事した。

「麻美ちゃんって、ヨットのベテランなのに時々、素人っぽいこと言うよね」

あけみが笑った。

「え、ベテランじゃないよ。私、特にヨットで何もしなくても、雪ちゃんや洋子ちゃんたちがちゃんと連れていってくれるんだもん」

麻美は、雪の腕をひつっかみながら言った。

「ラッコは、ベテランがいっぱいいるもんな」

中野さんも、お酒を飲みながら言った。

「こちらは、お鍋ちゃんと出来ている?」

しばらくして、麻美は下のキッチン側サロンにやって来て、そこにいる皆に聞いた。

「美幸ちゃんがやってくれてる」

「美幸、なんか料理が上手なんだよね」

ルリ子たちが麻美に返事した。

「そうなの。じゃ、こっちのお鍋は美幸ちゃんにお任せかな」

麻美は、上のパイロットハウスの自分の席に戻っていった。

いさなみすやお

「いいよ、シンクでお水に浸けておけば」

麻美は、雪に言った。

もう時刻は、午前の3時過ぎだった。

夕食、そのまま飲み会に突入して、ついさっきまで続いていたのだった。

先ほど、マリオネットも、あけみちゃん夫妻とも、それぞれ自分の船に戻ったところだった。

麻美と雪は、食べ終わったお皿やグラスを、キッチンのシンクに水を張って、付け置きすると、洗うのは明日にして寝ることにした。

「私、ここで寝てもいい?」

雪は、お皿などをシンクに片付け終わったパイロットハウスのキャビンのテーブルを下げて、ベッドを作りながら言った。

「うん、いいけど。あれ、雪ちゃんって一番前の部屋で寝ていたんじゃないの?」

「そうなんだけど、美幸ちゃんがルリちゃんと一緒に寝ていたから」

「あ、そうなんだ」

麻美は、美幸ちゃんもこっちで寝たんだって思いながら返事した。

「美幸ちゃん、マリオネットなのに、こっちで寝てるみたい」

雪が言った。

「別にいいんじゃない。だって皆、こっちの船で寝ているのに、一人で向こうに帰って寝るのは寂しいわよね」

麻美は答えた。

「雪ちゃん、ここで寝るの大丈夫?」

「うん」

「ここの部屋は、周りの窓がカーテン無いからね。朝とか明るくない?」

麻美は、パイロットハウスに付いている窓を確認しながら言った。

「大丈夫よ、布団かぶちゃうから」

雪は、タオルケットを頭からかぶってみせながら答えた。

「これ、引けるのかな?」

麻美は、窓枠の手前に付いていたシェードを引いてみた。

「あ、とりあえず、これ引けば、少しは陽の光りが入ってこないわよ」

麻美は、パイロットハウスの窓に付いていた薄いシェードを引っ張って覆った。雪も手伝って、シェードを閉めた。

「これで、少しは暗くなったでしょう。今度、この部屋のカーテン作ってくるね」

麻美は、つぶやいた。

「おやすみなさい」

麻美が言って、雪はパイロットハウスのベッドに横になった。

「ふふ、見て。どうせ上から陽は差しちゃうわよ」

雪が、天井に付いているサンルーフを指さして笑った。

「あら、本当だわ」

麻美も、思わず笑ってしまった。

「でも、周りのヨットからは、敷居になって寝ている姿見えないからいいでしょう」

麻美は、言った。

「それじゃ、おやすみ」

麻美も後ろのオーナーズルームに入って眠りについた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。