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デイクルーズのお昼休み

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この度、横浜マリーナ会員の斎藤智さんが本誌「セーラーズブルー」にてヨットを題材にした小説を連載することとなりました。

クルージング教室物語

第203回

斎藤智

日曜日、ラッコは横浜マリーナの艇庫からスタッフに出してもらって、海に出た。

乗っているメンバーは、いつものメンバーだった。

お昼は八景島のマリーナに停泊して食事した。

「きょうはカレーか」

隆は、出てきた麻美のお手製お昼ごはんに舌づつみを打った。

いつもならば、横浜マリーナのほかの船もやって来て、ラッコのキャビンのお昼は大人数で賑やかなのだが、きょうは珍しくほかの船がいなかった。

本当に内輪のいつものメンバーだけのお昼ごはんとなった。

お昼を食べ終わると、皆はそれぞれ思い思いにのんびり過ごしていた。

麻美は、昨夜遅かったとかで、船尾のオーナーズルームのベッドでお昼寝をしていた。

佳代も麻美につきあって横で一緒にお昼寝だ。

雪は、最前部のフォアバースで一人ゆうゆうとお昼寝していた。

ルリ子と香織は、デッキで釣り糸を垂れて、釣りを楽しんでいた。

ダイニングに二人残された隆と洋子はおしゃべりをしていた。

「きのう、金曜にさ、会社でなんか仕事が立て込んでて、すごい忙しかったんだ」

洋子が言った。

二人は、しばらくどうってことない世間話をしていた。

いつもルリ子とかが一緒だと、きゃきゃとおかしな話に加わって、笑い話も多いのだが、隆と洋子の二人だけだと、おかしな話というよりもわりと普通に世間話が多くなる。

「あのさ、洋子。マジな相談なんだけど、してもいいかな」

隆が言った。

「うん、どうぞ」

「あのさ、最近、麻美の実家でばかり暮らしているんだよ」

「そうなんだ、良いんじゃないの」

「会社の近くにマンション借りてるんだけど・・ってか、会社からすぐに帰れるようにって思って、会社の近くにわざわざマンション借りたのに」

隆が言った。

「会社から遠い麻美の実家にばかり帰ってしまうんだよね」

「会社から遠いっていっても、電車通勤じゃないでしょ。自動車でしょ?運転手付きの」

「運転手・・運転手なんかいないよ」

「自分で運転してんだ」

洋子が聞いた。

「あ、いや。麻美がいつも運転してる。麻美が運転手なのかな」

「麻美ちゃん、わりと車の運転好きだもんね」

洋子が笑った。

「でさ、麻美の実家だと客間で寝てたんだ」

隆が言った。

「だけどさ、最近になって、麻美の弟が結婚したんだ。それで、弟が二人で新婚気分というか二人の新しい家庭を築きたいとかで、同じ中目黒だけど、近くにマンション買ってさ、引っ越したんだよね」

隆が言った。

「しばらく二人の生活だったら、マンションわざわざ買わずに借りるだろうけど、買ったってことは戻ってこないつもりなんだろうけどさ。それでさ、弟の部屋が麻美の部屋の隣りにあって、そこが、がら空きになってさ、そこに俺が荷物持ってきて住んでいいっていうんだよ」

隆の話はまだ続いていた。

プロポーズ?

「で、麻美ちゃんはなんて言っているの?」

洋子は隆に真剣に聞いた。

隆の話は、まだ続いていた。

「麻美は、俺が住みたいって思うなら、住んだらいいってさ」

隆は答えた。

「それで、俺も、麻美も麻美のお母さんも良いのから住みたいかなって思ってさ」

「うんうん」

隆の話は続いている。洋子は、大きく頷きながら聞いていた。

「あと、麻美のお父さんも。で、麻美のお父さんはいつもは大概サンフランシスコの本社のほうに勤めているから、弟が家を出たら、麻美とお母さんだけで女性ばかりになってしまうから安心だって」

隆は答えた。

「どうしたの?なんか深刻な話?」

デッキで釣りをし終えたルリ子が戻ってきた。

「釣れたの?」

隆は、バケツの中を覗き込んで、中にいた二匹のアジを見た。

「うん」

ルリ子は、釣れた魚を隆に見せながら嬉しそうだ。

「香織ちゃんも釣れたよ。片付け終わったら戻ってくる」

隆は、すごいなってルリ子に言った。

「で、どうしたの?深刻そうじゃん」

ルリ子が隆に聞いた。

「え、いや別にぜんぜん深刻じゃないよ」

隆は答えたが、

「隆さん、麻美ちゃんの家で暮らすんだって」

洋子が隆から聞いたことをルリ子に伝えた。

「ええ、そうなんだ。もしかして隆さん、麻美ちゃんと結婚するの?」

率直なルリ子は、はっきりと隆に聞き返した。

「そ、そうなんだよね。やっぱり結婚したほうがいいのかな」

隆は、思わず素直にルリ子に答えてしまった。

「それはそうよね。洋子ちゃん」

「うん。それはそうよ、麻美ちゃんもぜったいに、それを待ってるとは思うけど・・」

洋子が答えた。

「わたしもそう思う」

表から戻ってきた香織まで話に加わった。

なんだか照れている隆の横にドカンと前の部屋から出てきた雪が腰かけると、

「うん、そりゃそうだよね」

雪も言った。

「なんだか皆にもうバレバレじゃん」

隆が答えた。

「どうしたの?」

お昼寝から起きてきたばかりの麻美が眠そうな目をこすりながら聞いた。

「隆さんがね、麻美ちゃんと結婚したいって」

洋子が麻美に言った。

「え!いや別に・・」

隆は、あわてて洋子に否定した。

「え、結婚したいんじゃなかったの?」

「え、まあ」

「したいんでしょ。はっきり言ってしまえばいいじゃない」

「そうだな、麻美と結婚しようか?」

洋子に即されて、隆は洋子に言った。

「それ、プロポーズ?」

洋子は、隆に聞いた。

「そ、そうだよ」

「もっとはっきり言わなきゃ」

「う、うん。麻美と結婚してもいいかな?」

隆は、洋子のほうに向きながら、洋子に?プロポーズした。

「洋子ちゃん、プロポーズの返事したほうがいいんじゃない?」

雪が洋子に聞いた。

「そ、そうだね」

洋子は、隆のほうに向きなおると、

「はい!お断りします!」

洋子は隆にそう言うと、

「麻美ちゃんと結婚したほうがいいと思います」

洋子は、そうつけ加えた。

皆は笑い出した。

麻美自身まで二人の様子を見ていて、思わず微笑んでしまっていた。

斎藤智さんの小説「クルージング教室物語」はいかがでしたか。

横浜マリーナでは、斎藤智さんの小説に出てくるような「大人のためのクルージングヨット教室」を開催しています。

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